【アスラフィルムの考えるアニメの働き方】ー東京、沖縄、金沢からトルコまで!? <ワクワーク2020 出展企業インタビュー>ー

今回は2013年創業の株式会社アスラフィルムの代表取締役・望月重孝氏にお話を伺いました。撮影スタジオからスタートし、現在はPVやMVビデオなどのアニメーション制作もする個性たっぷりの成長企業です。

しかし設立当初には、失敗もありました。これまでの経験や、撮影ならではの仕事、海外に広がる事業など。さらにアニメーションの仕事に求められる資質まで、多岐にわたるお話になりました。

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◆東京、沖縄、金沢からトルコまで アスラフィルムが海外に目を向ける理由

――まず会社の事業内容からお伺いしてよろしいですか。

望月重孝氏(以下、望月):

当社の仕事の中心は、アニメーション制作の撮影です。さらにアニメーション制作全体を統括する元請け制作もやっています。テレビシリーズというよりも、PVやCMなど比較的長さの短いものが多くなっています。ただ劇場作品のプロデュースや、海外の仕事など、幅広く引き受けています。

 

――会社の歴史とターニングポイントがありましたら教えください

望月:

会社を設立したのが2013年です。ターニングポイントも創業時ですね。28歳の時にアスラフィルムを立ち上げて、初めに線撮の業務を受注しました。その納品が5時間遅れて、さらに仕上がりが充分でないと納品拒否となりました。恥ずかしい話ですが、当時の線撮のクオリティを把握していない結果でした。

当時のクライアントさんにはとても申し訳ないのですが、あの失敗があったからこそ今があると感じております。

 

――現在の会社の規模感はどれくらいでしょう?

望月:

従業員は50人くらいですね。ただ中国の会社とも提携をしているのでそこにも10人程度います。男女比では、たまたまですけど管理部はほぼ女性です。

撮影の人数は40人ほどですが、こちらは8割が男性です。このうち、管理部、撮影監督ら含め10名ほどが正社員で、あとは業務委託の形をとっています。

 

――アスラフィルムさんが、主要な仕事としている撮影とはどのような仕事なのでしょうか。

望月:

撮影の業務は、「本撮」と「線撮」という2つの業務があります。

本撮はアニメの最終的な画作りをする作業です。ペインティングの終わったカットごとの絵に背景など組み合わせたうえでAfterEffectsなどのソフトを使って、映像にエフェクトをかけたりします。

いっぽうの線撮は、絵コンテやレイアウトをつなげた映像素材を作る工程を指します。まだ全体のフィルムが仕上がっていない段階でのアフレコの時に音響や声優が使用します、

線撮はその場限りで使うものですから、粗い仕事になってしまうことが多いのですが、うちの会社ではそこにこだわり、綺麗に作っています。監督やプロディーサーの意見を聞き、求めている点を反映します。

また最近では線撮をプロモーションとして出すことが多くなってきて、売り物としても使えるレベルが求められています。クオリティを重視した結果、お声掛け頂く事もよくあるので、そういう意味で線撮は大事にしています。

 

――東京以外にも拠点があると伺いました。

望月:

国内では東京のほかには金沢と沖縄、それに岡山に拠点があります。今後は大阪と、それからトルコに拠点を作ろうと考えています。

――トルコですか?  それはトルコでアニメの撮影をやるということなのでしょうか。

望月:

いいえ。トルコで日本風のアニメやイラストなどのコンテンツ開発をやっていきたいと考えています。日本スタイルの絵を受注して、会社のコンテンツを発信していくことなどです。

 

――業界としても新しい試みですね。

望月:

海外にはチャンスしかないと思っています。ところが現在の日本には、プロデューサーでありかつ決裁権がある社長で、さらにアニメ業界のことを知っていて、業界外の見地がある人はそこまで多くない。

だから僕がマーケットを開拓をしてこようと。中国でもいま日本のアニメ会社がもとめられていることが多くあるんです。僕はよく海外に行くんですけど、そうしたら「会ってくれ会ってくれ」と引っ張りだこなのです。これが今の海外アニメ市場なんですが、海外に行くアニメ会社はまだまだ少ないですね。

だからアスラフィルムがマーケットを開拓して、ほかのアニメ会社にも窓口を提示できるようにしたいと思っています。

◆アスラフィルムの働きかた

――会社の1日、1週間単位のスケジュールをお教えください。

望月:

撮影については映像の素材を渡されて、それを作業したうえで納品します。作業時間はそれぞれで違います。技術が高い人は6時間くらいでやってしまうこともありますし、12時間かかることもあります。

また業務委託なので、各自素材が渡される時間に合わせて自由に来て、自由に帰ります。スケジュールの管理も自分でやります。しっかりした人が多いです。
制作は、シフト制で24時間稼働していますが、概ね11時から9時間くらいがコアタイムですね。

 

——夏休みや冬休みといった長期休暇はありますか。

望月:

夏休みは7月~9月頃に3日ほど付与するので好きなタイミングに取得してもらいます。冬休みは毎年、年末年始の12月28日から1月3日まで1週間くらいです。

それ以外ではスタッフそれぞれの誕生日月に休暇が2日付与されます。各休暇をつなげて長期休暇を取るスタッフもいます。

 

――社内イベントなどは設けていますか?

望月:

忘年会が28日にあります。 あとイベントではまったくないですが、福利厚生として指圧があります。2週間に1回、僕の新聞奨学生時代の先輩なんですが、世田谷治療院てのひら代表の宮下さんがオフィスに来てくれるので、施術を受けることができます。

 

――スタッフの採用にあたって必要なスキルなどありましたらお教えください。

望月:

先ほどもあったように僕自身がよく海外に行くので、一緒に海外へ飛べるような人がいいですね。よく社内に向けて海外に一緒に行ってくれる人を呼びかけています。求めるのは英語とコミュニケーション能力、そしてフットワークの軽さです。

 

――それは撮影であっても、制作であってもですか。

望月:

撮影志望であっても欲しい資質です。制作方面の人は必須ですね。

 

――撮影志望の場合は、AfterEffectsなどの技術は必要になってくるのでしょうか。

望月:

いいえ、未経験者採用をしていますのでその点は問題ありません。研修期間があり、そこでは実際の仕事ではなくカリキュラムに沿って経験を積みます。だから最初は全員が未経験者なんです。

そのカリキュラムの後に実際に取引先にも納品する現場の仕事をやってもらうようになります。ほかにもクライアントとの打ち合わせなども並行して経験することで、基本マルチタスクでやっていきます。

――アニメーションを作り、事業を進めるなかでのやりがいはありますか?

望月:

全てですね。仕事は、基本的にめんどくさいものなんです。楽しいし、面倒くさい。好きだし、嫌いだし。そんなアンビバレンスな環境の中で、モチベーションが上がったり下がったりすることはないんです。

モチベーションがなくなったら、やめるのかという話になってしまう。 でもそれは何か違う気がするんですよ。全部楽しくて全部めんどくさい、でもつまらないものはない。そんな感じです。

 

――アニメ業界を目指す学生にメッセージをいただけますか。

望月:

プライドを捨ててください。社会人は怒られるし、つらいもんなんです。プライドなんかめちゃめちゃにされます。でもクリエイティブな事が好きならこの業界は楽しいです。

だから、あんまり片意地張らず来てください。待ってます。

 

――貴重なお時間をありがとうございました!

 

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<ライター:羽田亘佑 、 編集:数土直志 、撮影:中山英樹>