――(笑) 話は変わりますが、舛本さんのようなマネージャー職は何名くらいいらっしゃるんですか。
舛本:
マネージャー職に関しては、プロデューサー、ラインプロデューサー、制作デスク、制作進行といった職種を全部を入れて、今15名くらいだと思います。
――会社のの人数構成比でいうと男女でいうとどれくらいですか。
舛本:
うちは基本的に男子校になっていて、最近ずっと(笑)
――女子にもっときてもらいたい、と(笑)
舛本:
女性の方にぜひとも志望してもらいたいですね! 社員の方は半々くらいではありますが、業務委託も含めて、となると全体で6:4で男性が多くなるイメージです。
――社員だけでいえば半々、というならそんなに偏っていないという感じですね。
舛本:
そうですね。最近、女性の入社が増えており、以前の男子校的な雰囲気から、男女共学まではいかないまでも、工業高校くらいまでにはなった、という感じですかね。
――ご年齢的には平均はどれくらいですか。
舛本:
だいたい、20代後半から30代前半くらいが平均年齢になるように思います。もちろん若い子も多いんですけど、アニメーターに関しては、やはり20代後半から30代にかけて厚みが増してくる職種なので、平均値でいくと30代前半になるかもしれないですね。
社員30名に関して言えば、僕を含む経営層・監督陣の兼ね合いで40前後になるのかと思います。とはいえ、最近入社しているメンバーの多くは20代なので、将来的にはもう少し平均は低くなっていくと思います。
――会社として1日の決まったスケジュールはあったりされますか。
舛本:
基本12時出社から20時までの8時間が就労時間、その中で1時間、任意のタイミングで休憩という形になります。実は役職に合わせて、入り時間と帰り時間を変えているんです。なぜかというと、やはり現場に近い職種はどうしても夜型になることが多いためです。もちろん、会社的意向としては昼間に仕事をして夜は帰る、としたいのですが、制作進行の仕事は人に合わせる仕事でもありますので、どうしても夜型になっていく兼ね合いもあり、そのスタイルに合った業務体系を、と設定しています。
業務のボリュームについては、作品のスケジュールに左右されることも多く、納品前はどうしても通常の業務量を超過しがちです。その分、弊社では作品が終わったタイミングで、1週間から2週間程度のまとめた休みをとる形でバランスを取っています。
例えるならば、アニメにおけるマネージメント職はボクサーみたいな仕事なんです。試合に向けて身体を作っていって、試合当日は3分のラウンドに一気に集中して、8ラウンド、9ラウンドと戦い、試合が終わったらみんな灰のようになっていく。若いうちは体力的にもそこまで疲れを感じないこともあるのですが、やはり精神的にもストレスがかかるので、一区切りがついたタイミングで休まないと将来的に続けていけなくなる。そのため、作品が終わったらほぼ強制的に休みは取らせるようにしています。もちろん法定の休みと有給制度とは別にその枠を設けています。
――年中行事はございますか。
舛本:
年中行事として何かをやるというより、作品終わりにあわせて打ち上げだったりイベントを行うケースがほとんどです。暦の上でのお休みももちろん意識してはいますが、大前提として良い作品を作り、定められた期間内にその作品を納める、というのが僕らの仕事ですので、その点を考えると、休みをとることまでは気は回っても、季節に合わせたお祝い事まではまだ手が回らない状況です。
そのかわり、作品が終わったら盛大に打ち上げをしたり、旅行をしたり、記念に本を作ったり。そういったそれぞれのイベントが、僕らでいうところの年中行事といえるかもしれません。
――会社としてのこだわっていらっしゃるポイントがもしございましたら、教えてください。
舛本:
さきほどの会社の強みと重複することでもありますが、ひとつは作品制作について。作品の企画から制作しているということが、アニメスタジオ・トリガーとしての大きなアイデンティティといえると思います。
もうひとつ、会社設立当初から常にこだわっていることとして、すべてのスタッフをワンフロアに収める、ということがあげられます。なぜそこにこだわるかというと、これもよりよい作品を作るためです。
アニメ制作って、いわば監督を頂点としたピラミッド型の構造なんです。監督がトップにいて、その下に監督を支えるシナリオライターやキャラクターデザイナーなどのメインスタッフ、さらにその下に原画マンとか動画マンなどの方々がつづく、というわけです。そういった制作現場において常に大きな課題となるのが、メンバー同士の意思疎通をいかに円滑に、活発にできるか、ということです。
具体的には、コミュニケーションの問題の多くは、物理的な距離によって生まれるのではないか、ということなんです。テキストで伝えられる情報は、当たり前ですがテキスト以上のものにはならない。システマティックにラインを組んで進めていくだけなら、それでも大きな問題にならないかもしれませんが、トリガーという会社は企画開発が非常に大きなコアとなっており、その企画開発においては個々人の価値観や人生観をぶつけ合う必要があり、それはテキストのやり取りでは上手く行かない。
自分の考えを吐露することができる環境がそもそも大変重要で、吐き出したその意見に対してほかからの反応がすぐに返ってくることで、頭のなかで考えがまとまっていくわけです。そういった地道なやりとりを積み重ねることで作品のコンセプトが固まっていくことを考えると、なるべく関わるスタッフ全員をワンフロアに入れることが、作品作りにおいて大きな価値となるのではないかなと思っています。