今回は数々のグッズを手がけている株式会社A3の代表取締役 小澤隆史氏にお話を伺いました。グッズの企画だけでなく、製造・販売まで一社で手がけられており、積極的に新卒の採用もおこなっていらっしゃる理由についてお話をお聞きしましたので、ぜひともご覧ください。
◆価値を生み出すためのワンストップ戦略
――最初に御社がどういったビジネスをされているのかお聞かせいただけますか。
株式会社A3 代表取締役 小澤隆史氏(以下、小澤):
グッズメーカーという立ち位置であることは間違いないです。ただ、弊社に関しては商品の製造だけにかぎらず、商品の企画から販売にいたるまで、ワンストップで自社で行うことができるということが特徴だと思っています。作品自体を立ち上げる、ということにはまだ取り組んではいないのですが、裏を返せば、それ以外の商品に関わる仕事はすべて行っていると言えます。
――会社設立当初から、現在のようなビジネスモデルを意識されていたのですか。
小澤:
いやいや全然そんなことはありません(笑)
僕はIT業界出身で、2012年に会社を立ち上げた当初はアニメのことはほとんどわかっていなかったんです。ただ、最初に扱っていた商品がモバイルバッテリーで、スマホが急激に普及し始めた時期ということもあり、家電量販店やスマホショップで結構な数取り扱っていただけて。ただ、海外から商品を仕入れて売るだけでは自社の強みになりえないので、どうしようかと考えていた時期に出会ったのがアニメでした。
――アニメとはどういった出会いだったのでしょうか。
小澤:
実は完全に偶然なんです。
スマホ周りのアクセサリーがどこでも需要が拡大していたこともあり、アニメ業界にちかしい知人経由で、キャラクター系のスマホのバッテリーが作れないかと相談がありました。その相談をきっかけにアニメイトさんに調査がてら足を運んでみたんです。そうしたら、頭の中にあった「アニメショップ=男性向け」というイメージとはまったく違っていて、おしゃれな女性たちが普通にアニメグッズを楽しそうに購入していて。カルチャーショックでしたね。
モバイルバッテリー自体は普及していたものの、アニメ商品としての実例はほとんどなかったので、ここに挑戦してみようと思いました。
――アニメ業界でビジネスをはじめられてみての印象はいかがでしたか。
小澤:
なにも知見もなかったこともあり、最初は商品化の相談しにいくことすらつまづくような状況でした。ただ、根気強く営業周りをした結果、一社から商品化についてOKをいただくことができて販売することが出来ました。その機会に、アニメのライセンスを取得して商品をつくるとはどういうことなのか、一から勉強させてもらいました。
――苦労して出された商品の売れ行きはいかがでしたか。
小澤:
それが思ったよりも全然売れなくて。そのときに、ただキャラクターを商品にのせただけでは、ファンの方には喜んでもらえないんだなということを学びました。
とはいえその商品をきっかけに、いくつかのタイトルで商品を販売させていただくことができました。そうして半年くらい過ぎた頃には、こうやったらファンに喜んでもらえる、こうやったら版元さんともご一緒しやすい、ということが肌感でもわかってきて、そうすると商品が呼応するように売れ始めてきたんです。
今では当たり前ですが手帳型のスマホケースもアニメ業界では弊社が最初に商品化させていただきました。アニメ業界でスマホ関連のアクセサリーのシェアが100%弊社だった時期もあったほどで。
そうやって手応えを得たこともあり、それ以降、自社内で商品企画、デザインをやれるようにと人を増やしていきました。
――その後、どのように成長されてきたのでしょうか。
小澤:
2015年ごろにアニメ業界のビジネスに専念するよう舵を切りました。グッズメーカーとしては後発ということもあり、どのように他社さんと差別化するか、という点に注力をしました。その出発点がスマホ関連のグッズだったのですが、もっと価値を生み出さなくてはいけないという思いもあり、いろいろな企画に挑戦してきました。
その中でも特に注目をしたのが、女性のお客様です。女性のファンの方たちにとって、日常の中でも使えるおしゃれなキャラクターグッズのニーズにしっかりと応えられる商品を、というテーマで弊社はその価値を出せたらいいなと考えました。現在弊社の一つの柱となった「GraffArtシリーズ」(落書き調に描かれたキャラクターによる商品シリーズ)も、そうした中で生まれた企画です。
――商品の製造も御社自身で行われるというお話でしたが、そちらについても詳しくお聞かせいただけますか。
小澤:
これも価値を生み出す、という点を追求していった結果なのですが、弊社は自前の工場を持って、自社で商品の製造をしています。
現在ってタイトル数も多く、人気の移り変わりも激しいじゃないですか。トレンドを追いかけるのはビジネスとしてもとても大変なのは事実です。ただ「じゃあヒットしたタイトル、ビッグタイトルだけ商品化すればいいんじゃない?」といわれると、そうじゃないですよね。どの作品にもファンの方はいて、グッズの発売を待ち望んでくれている。だとしたら、その思いに応えたいし、応えなければいけない。そうすると、機動力を持って、小ロットでも商品を作れるようにならなくてはいけないわけで、そう考えると自然と自前で工場を持つという結論になりました。
――販売まで手がけられるようになったのも、ファンに価値を提供することを考えた結果なのでしょうか。
小澤:
そうです。正直、店舗を自社で持つことなんて最初はまったく考えていませんでした。アニメイトさんのような大手の販売店がいくつもあるなかで、自社で販売まで手がける理由はないんじゃないかと思っていたんです。
ただ、やっぱりたくさん商品がある中で、自社の商品を手にとってもらうことって難しいんですよね。弊社の商品はさきほどお伝えしたように、コンセプトが一貫した商品ばかりなので、であればそのコンセプトがしっかりと伝わるよう、自社商品だけを集めて販売してみたらどうだろう、と思い、本当に実験的に店舗運営をはじめたんです。
――お客様の反応はいかがでしたか。
小澤:
とても喜んでもらえました! 実際にお客様の生の声を聞くことができるという点でも直接販売を行うことのメリットも感じられましたし、ありがたいことに売上もよかったです。その一方で、都内以外のお客様からは、地元にも来てほしいというお言葉をいただきました。であれば、その期待にお応えしようと店舗を増やしていった結果、現在全国に21店舗を展開するまでになりました。