アニメのビジネスを語る上で、外すことが出来ないワード、それが製作委員会です。
まず、大前提ですが、アニメはビジネスです。ビジネスとは、経済活動、ありていに言えば「お金儲け」です。アニメの制作費用は現在、30分番組を1クール(12~13本)制作する場合、大体2億円程度かかると言われています。ここ数年は一年間にTVシリーズとして200本以上が制作されていると思いますので、単純計算としても400億円以上がアニメの制作費として投じられています。なぜ、これほどの金額が動くかといえば、各作品ごとに投じた金額以上のリターンがあると目算がたっているからにほかなりません。そして、作品ごとに構成されているビジネスの座組み、それが製作委員会です。

製作委員会のアニメビジネスで果たす機能は、大きくわけて2つ。「コストの分担」と「ライセンスによる利益回収」です。それぞれ説明していきます。

「コストの分担」とは、制作費用などの作品に絡む全てのコストを製作委員会に参加する企業で負担することを指します。製作委員会を構成する会社が2社であれば2社で、10社であれば10社で分担します。注目すべきは、参加企業全社で均等に費用を負担するわけではない、ということです。後述する、各社が獲得する作品の権利により負担する割合は増減します。具体的には、2000年前後から、アニメ作品はDVD・Blu-rayなどを販売することで利益を回収することが多く、その販売元となるパッケージメーカーは、製作委員会を取りまとめる幹事企業となることも多いのです。そのため負担割合も多いことが今までは一般的でした。

「ライセンスによる利益回収」とは、作品にひもづく様々な権利を用いたリターンの部分です。製作委員会には、先に上げたパッケージメーカーのほか、グッズ・フィギュアを制作・販売するホビーメーカー、関連楽曲を販売するレコード会社、放送を行うテレビ局など複数のジャンルの企業によって組成されることが多々あります。これは、各領域における専門企業を巻き込むことで、その領域での作品展開を効果的・効率的に行うという側面があります。例としては、ホビーメーカーが製作委員会にいることで、作品がはじまったタイミングでグッズをタイムリーにファンに提供できる、といった効果です。この場合、このホビーメーカーは製作委員会に参加していない企業と比べ、優先的にグッズ化する権利を獲得するなどのリターンを得ます。

上記はあくまで一例です。アニメ作品がそれぞれすべて違うものであるように、製作委員会の組成もひとつとして同じものはありません。製作委員会における各社の契約、つまりどれくらいコストを負担するか、作品の収益をどのように各企業に還元するかは作品ごとによって異なり、「こうあるべき」といったスタンダードなモデルは存在しません(権利に対するコストの負担割合の大まかな相場観はもちろんありますが)。アニメのオープニングやエンディングに記載されている製作委員会の企業が、どういった意図でその作品に参加しているのかを想像すると、アニメのまた違った楽しみ方が出来るのではないでしょうか。

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