<ワクワーク2019 出展企業インタビュー>  第2回 株式会社トリガー取締役・舛本和也氏

――そういった業務内容を踏まえ、舛本さんが考える「業界に入る前にやっておいた方がいいこと」がございましたら教えてくださいますか。

舛本:
 一概には言えないんですけど、可能なら学生時代に作品制作を体験しておいてほしいと 思っています。作品というのはなにもアニメに限った話ではなく、映像やゲーム、なんでもいいんです。専門学校などで講演をさせていただく際によく言うんですけど、最低4作品は作っておけ、と伝えています。というのも、作品制作を経験している人と、そうでない人では、業界に入った後の継続率が顕著に変わるんです。
 アニメは特に、作品を完成させるにあたって多くの人と話さないといけない。コミュニケーションを積み重ねる中で、「この人はこう言っているんだけど、次のセクションのことを考えると、ここではその意見は通せないな」みたいに、すごく視野が広がった形で業界に入れるので、学生のときに複数人が関わるプロジェクトに関わったことがあるかどうかは、大きなポイントだと思います。

 作品制作が難しかったとしたら、イベント運営に関わるというのも良いと思います。学園祭やイベント制作のアルバイトはもちろん、小さなところでは誕生日会や飲み会など小規模なイベントの幹事でいいんです。誕生日会などは目的が一つでわかりやすいですが、集まったメンバーを取りまとめて、日程やお金を管理して、祝った人に喜んでもらえたか、参加したメンバーの満足度が高いかどうか。これって十分な管理業務なんです。

――イベントの幹事、ということであれば身近な経験として意識的に取り組むことが出来ますね。

舛本:
 あとは、接客業のアルバイトですね。外食やコンビニ、人と日常的に接する仕事であればOK。その中で特に重要なのがクレームのときの対応。相手が何に不満を持っていて、何を求めていて、自分がその人のためにとるべき最も良い対応は何かを考えることは、コミュニケーションの上でとても大切だと思います。

 自分で処理できないことは店長に言うとか、それもすごくセンスなんです。やれる仕事とやれない仕事がわかった上で、人と相談するというのも重要なセンス。わからないことを人に聞けるかどうか、なんですよ。自分で負い切れないことをわかる人に相談するだけで回避できるストレスは結構あって、それをセルフコントロールできることも僕はセンスだと思います。

――採用に当たっての具体的なフローについて、お教えいただけますか。

舛本:
 書類選考と面談が主な採用フローです。
 ただ、正直な話、その人の人となりは、短期間でわかるものでもないので、弊社の場合、面談から内定までの間にインターン期間を設けています。インターンといっても、1週間、弊社で制作の補助作業を行っていただく中で、適正を判断させていただくようにしています。インターンにあたっては報酬もお支払させていただきます。

――長時間、お時間を頂戴しありがとうございました。最後にアニメ業界を志望する人に向けてアドバイスやメッセージをいただければ!

舛本:
 そうですね。何にしようかな…。

――多分、多くの学生が、はたして自分はアニメ業界で働けるだろうかと不安に感じているのではないかと思います。

舛本:
 飛び込むのに勇気はいると思います。
 個人的には、夢や希望といった言葉を胸に抱いて、キラキラした目で来る世界ではないのではないかと思っています。さっきお伝えしたプロデューサーという仕事についても、日本においてプロデューサーという肩書の人って、1つの作品に1人しかいないんです。
 この人数は当たり前ですが監督と一緒です。日本にアニメ作品の監督って作品のタイトル数しかいません。日本中でそれしかいない、その人数しかなれない仕事なんです。そういうことが数字的に自分に実感があるかどうかは、若いうちからわかっていないと「あれ、こんなはずではなかったのにな……」とギャップに悩むと思います。

――そのあたりは自覚的に入ってきてほしいな、と。

舛本:
 できれば、ですけどね。とはいえ、それが難しいこともよくわかるんです。そこまでは意識できなくても好きな作品を作るとか、そういうことから始めていけば実感が持てるのではないかと思います。
 自分自身を、何かしらの形で客観的な評価の目に晒すということはすごく重要だと思います。自分の価値は自分では決められないんですよね。自分の価値はあくまで他人が決めてくれるものなので。例えばYouTubeに自分の作品をあげて、どれくらい再生されて、いいね!がどれくらい付くかを知ることって重要だと思うんです。

 世間に晒される、自分の価値、作品の価値を他者にに委ねるということを経験している人は、そうでない人よりいろいろなことをシビアに考えられると思います。そういうところを早めに知るチャンスをもらえるといいな、と書いておいてください(笑) それをいますぐしろ、っていうと無理なので。
 今回のイベントに僕も当然参加しますし、多くの会社から業界で働いている人と話す機会もあるかと思います。ぜひそういうチャンスを有効活用してほしいですね。

舛本氏も参加される、3月6日(火)のアニメ業界就職フェア『ワクワーク2019』!! エントリーはこちらから!

<ライター:木内優花 、 編集・撮影:中山英樹>