<ワクワーク2019 出展企業インタビュー>  第8回 株式会社ポリゴン・ピクチュアズ人事総務部 兼松厚氏・二宮渉氏

 アニメ業界就職フェア「ワクワーク2019」開催から早いもので10日経ちました。多くの方にご来場いただき、昨年を大きく上回る規模でイベントを開催することが出来ました。引き続き、今後もアニメ業界に関する就職のための情報や機会を提供できますよう、活動を行っていきますのでよろしくお願いいたします!

 さて、第8回となる本記事では、『シドニアの騎士』『亜人』『GODZILLA 怪獣惑星』などのフルCGアニメーションを手がけられてきた株式会社ポリゴン・ピクチュアズのインタビューをお届けいたします。今回は人事総務部 兼松 厚氏、二宮 渉氏のおふたりにインタビューさせていただきました。
 
 会社の成り立ちから、今後アニメ業界で求められる人物像、今年採用を行う業種などについてお話を伺いましたので、ぜひともご覧ください。
 
――本日はお時間をいただきありがとうございます!まず最初に、会社の簡単な沿革について教えていただけますでしょうか。

兼松 厚氏(以下、兼松):
 ポリゴン・ピクチュアズは1983年7月に創業した世界でも最も歴史のあるCGアニメーションのスタジオです。設立当初はCGの技術を用いた研究開発を中心に行う会社でしたが、少しずつキャラクターの開発や映像作品の制作へ活動の主体が移っていきました。

 そんな中生まれたのが、イワトビペンギンのロッキー×ホッパーです。男性用ヘアムースのCMに使っていただいたのですが、人気が出てさまざまなグッズ展開などをすることができました。「ペンギンの目覚まし時計持ってました」といったコメントは今でもよく耳にします。

 ここ10年くらいは、大規模なシリーズの受託制作から自社IPの作品制作を中心にゲームや遊技機の制作を手がけています。大規模なシリーズでは、ハリウッドスタジオのディズニー、ルーカスやハズブロなど海外のクライアントからのお仕事、例えば『トランスフォーマー プライム』『トロン:ライジング』『Lost in OZ』といった作品などがあります。自社IPの作品では『シドニアの騎士』や『亜人』などが挙げられます。ゲームの映像の『ストリートファイターⅣ』の墨絵の表現は今でもよくお褒めいただきますね。

 大規模な海外作品の受託制作は、私たちにとって大変良い経験になると共に、大規模であればあるほど、その作品を制作し終えた後、継続して受注し続けることの難しさも感じました。また、海外のより人件費の低い国のレベルが少しずつ上がってきているため、それらと競合せねばならない状況も我々に危機感を募らせました。その中で単価に振り回されないような収益の上げ方を求めた結果、ポリゴンがもともと行っていた企画開発型の、つまり自分たちの作品を立ち上げるような方法を取るようになりました。

――企業のブランド力を高めていくことは意識されたのですか。

兼松:
 収益を上げる方法論としてブランド力が必要だったということは事実です。ただ、ブランド力を高めるために何かをしたということでなく、企画開発型の作品制作に取り組む中でブランド力も自然と上がっていったという流れです。『シドニアの騎士』や『BLAME!』などのセルルックの作品がそれに当たりますが、ポリゴンとしてはセルルックという表現方法に深くこだわっているわけではありません。世界で通用する我々の独自性を追求していった結果が、ああいった作品に繋がったと思います。

――会社としてのエポックメイキングと言えるような作品はありますか。

兼松:
 海外のクライアントからの作品を継続的に受注できるようになったという意味では、『くまのプーさん』シリーズは外せないと思います。そこから『トランスフォーマー プライム』、『トロン:ライジング』、『スター・ウォーズ:クローンウォーズ』、『Lost in OZ』 と途切れることなくずっと続いているんですよ。当時は「海外作品といえばポリゴン」という業界内での認知になっていたくらいです。国内作品の制作費では単価が低く、CGによる制作では利益が出しづらいので、「海外から大きな仕事を持ってくる」という方針ではあったのですが、海外のスタジオとコネクションを作って実際に受注に至るまで漕ぎつけるというのは大変難易度の高いことでした。

――そういった海外との交渉は塩田社長がやられているのですか。

兼松:
 そうです。
 塩田と海外担当のプロデューサーが行っています。日本のスタジオとしてはいち早くネットフリックスと契約できたのも彼らの働きによるものです。
 一方で、受託制作だけでは安定的な収益を得ることが難しいとう考えはずっとありましたので、収益のバランスとして作品の受注売り上げそれ自体と、作品のIPによるビジネスの両面をやっていこうという流れの中で『シドニアの騎士』に挑戦しました。

 これは僕たちが連載作品の中から「これはCG映像でいけるんじゃないか」という作品を選び、講談社さん、キングレコードさんと共に製作委員会を組ませてもらい、かつ、我々持しも出資をして制作を行いました。今のポリゴン・ピクチュアズのライツビジネス展開のきっかけになった重要な作品ですし、そういう意味ではエポックメイキングな作品と言って良いと思います。

――会社として作品を選ぶ際はIPに繋がるものを選んでいる、というのが現状でしょうか。また、外部から依頼された案件にはどのように対応していらっしゃいますか。

兼松:
 基本的にお受けする仕事はIPに繋がる作品ですね。または受託制作であれば収益性の高いものに絞っています。逆に言うと結構な数のお仕事をお断りしなければいけない、というのが現状です。

――そうなんですね。御社はコンスタントにハイクオリティーな大型作品を発表し続けている印象があるのですが、その「制作力」は何に由来するものなのでしょうか。

兼松:
 様々な要素が関わってきますが、ひょっとしたら僕らの会社の一番の強みは「納品力」なのかもしれませんね。クオリティーに関してはもちろん予算の関係もあります。それでも、ピクサーレベルとまでは言えないかもしれないですが、今までセルルックの作品を見てきた日本の視聴者に「アッ」と言わせられるクオリティーを有していて、なおかつそれを納期の中できちんと達成する絶対の安心感を伴っている。この点については他社よりも秀でているだろうという自信があります。

――TED×Kyotoで塩田社長は自身が元いた製鉄会社での工程をアニメ制作に活かす、といった話をされていましたね。(https://www.youtube.com/watch?v=Ba5Jl1_JKZY

兼松:
 言っていましたね。社長の言葉で印象的なのが、「鉄、つまり人工物ではないものでも制御できるのだから、人間が作り出す人工のモノが制御できないはずがない」というものです。