第一回W@KU WORK mini イベントレポート(前編)

2016年5月29日(日)、アミューズメントメディア総合学院本館にて、学生向けのエンタメ業界関係者による講演会「W@KU WORK mini」第一回目を開催した。当日、会場となるフロアには学生を主とした100名超の参加者が集まり、満員御礼の元、講演会が行われた。

第一回目の講演者は『ソードアート・オンライン』や『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(ともに電撃文庫刊)など数多くのヒット小説を世に送り出してきた株式会社ストレートエッジ代表取締役 三木一馬氏。「出版業界・アニメ業界で働くこと」をテーマとし、編集者三木氏の仕事内容や仕事へのこだわり、学生に向けての就職活動についてアドバイスなどを含んだ講義は非常に内容が盛り沢山なものとなった。以下にそのイベントのレポートをお送りする。

株式会社ワクワーク中山(以下中山):本日は弊社のイベントにご参加いただきありがとうございました。早速ではございますが三木様にご登壇いただきます。三木様、よろしくお願い致します。

株式会社ストレートエッジ 三木一馬氏(以下三木):皆さま、今日はお忙しい中集まっていただきありがとうございます。今回の講演会、肩肘張ったものではなく、面白い!楽しい!と感じてもらえるものにしていきたいので気楽に聞いてもらえたらと思います。

三木:まずはプロフィールを紹介させていただきます。2000年に上智大学を卒業して、当時のメディアワークスに入社しました。最初の一年は会社の中の間接部門にあたる部署で働き、紙の資材手配や編集者のサポートが主な業務でした。思い起こすと一年目に当時メディアワークス社長(現カドカワ代表取締役会長)の佐藤辰雄さんとご一緒する倉庫見学ツアーで大遅刻をやらかしまして、周りから「こいつはヤバイ」という烙印を押されたものでした。

そんな最初の一年を経て、電撃文庫編集部に配属されました。翌年2002年に初めて自分の単独担当作として高橋弥七郎さんの本を出させていただきました。その年の11月に転機があり、同じく高橋弥七郎さんの『灼眼のシャナ』の一巻が出て、大ヒットとなりました。イラストレーターのいとうのいぢさんにいち早くお願いしたのも大きかったですね。その成功体験を機会に「業界で頑張れるかも!」と思いましたね。

その『灼眼のシャナ』が2005年にアニメになりました! 担当作のアニメ化第一作目という点では『撲殺天使ドクロちゃん』になるのですが、それらのアニメ化に際して、担当いただいた現ワーナー・ブラザースジャパンの川瀬浩平プロデューサーにいろいろな手ほどきをしていただきました。そこで「アニメは原作サイドの自分も一緒に動いて、一緒に作っていかなくてはいけないんだ」ということを強く感じ、編集者という立場ではありながらも、アニメに深く関わっていくことになったのがこの頃です。

2014年に電撃文庫編集長になり、電撃小説大賞の選考委員として携わりました。その翌年「本を書いてみない?」と編集プロダクションの方からお声掛けいただき、「面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集者の仕事目録」という本を出させていただきました。作家さんの気持ちを味わってみたいと思っての挑戦だったのですが、本を出すにあたり二度と作家さんに「原稿まだですか?」と聞かないようにしようと思いましたね。

一同笑

三木:そんな中で、会社を新しく立ち上げて独立という道を歩くこととなりました。

中山:その株式会社ストレートエッジがどういう会社かというと……

三木:僕が取引先にお見せしている資料をベースに今回は説明させていただきますね。

三木:これが僕の独立した理由です。ストレートエッジという社名は作家さんたちのガイドラインになりたい、という思いを込めて名づけました。

ビジネスの主なコンセプトは、プラットフォームを持たずに、IPすなわち物語の原作やキャラクターを、プラットフォームに提供するというものです。今までと同じように電撃文庫にも物語を提供しつつ、ゲームやVRコンテンツ、遊園地のアトラクション、企業のCMなど出し先に合わせた形で物語を作っていくようなことも想定しています。

あくまで理想像なので、まだまだ何も出来てはいませんが、このビジネスモデルを現実のものにするため今後頑張っていきます。

中山:では続きまして、「エンタメ業界で働くためには」というテーマにて三木さんにお話いただきます。

三木:本日参加されている方々は、エンタメ業界を主に志望されていらっしゃると思います。今回話す内容は、あくまで僕視点での話であり、エンタメ業界を代表して話すことではありません。今回話す内容を皆さんで一度飲み込んでいただき、それぞれの答えを出してもらえればとおもいます。

三木:最初のトピックは、自分自身がやりたいことを自覚するということですね。すでにもうやりたいことが決まっているという人はなにも問題ありません。気合いを入れてやりきってください。ただ全員がそうではないと思います。僕自身就職活動を始めるまでは遊んで楽しく暮らせたらいいな、くらいのイメージでした。でも働かなくてはいけない。仕事と付き合っていくほうが、学生でいる期間より長いのは明白なので、「どうせ仕事にするならすこしでも長く付き合える、楽しくこなせるもののほうが良いよね」というやや後ろ向きの考え方でしたね。

三木:エンタメ業界を志望される方が多いということは、多分こういったアニメや漫画、ゲームや演劇、テレビといった仕事に興味があるのかなと思います。こういった候補の中からどうやって仕事を決めるのか、という話です。

三木:その中でまず大きな枠組として存在するのが、クリエイターかディレクターかという選択です。これは極論を言うと、クリエイターさんはゼロから作品を生み出したい人、ディレクターはクリエイターの創作活動のサポートをしたい人です。自分自身の特性を振り返ってみて、どちらのほうが自分に向いているのか、もしくはどちらがやりたいことなのか考えてみてください。

三木:次に自分が目指す業界の情報分析。その会社の業務内容や適正、どういった人と仕事をするのか、どういうマーケットをターゲットにしているのか、などなどは志望する上で把握しておいてください。事前にその会社が狙っているターゲットや必要としている人材を知らないで会社を受ければ、採用される確率は下がりますし、仮に入ったとしても長く仕事を続けていくことが難しいかもしれない。自分の持っているスキルがマッチする会社と出会うことがとても大事です。