アニメ制作で使用するツール・テクノロジー 〜連載第2回 ツール編〜

連載記事第2回!前回は、アニメーション技術の歴史について説明していきましたが、今回は、アニメ制作で使用するツールについてです。まず、アニメの制作は以下のような工程で構成されています。

その中で、中心となる工程が作画工程(ここでは、原画と動画工程と定義します)です。作画工程には、制作工程全体の中でもっとも多くの人員が割かれており、駆け出しのアニメーターからベテランのアニメーターまで多くの人材が集まっています。そこで、前半はこの作画工程に着目して、アナログ作画、デジタル作画それぞれで使用する道具について見ていきます。
そして、後半では、近年のアニメ制作のデジタル化に伴い多様なソフトの使用が進んでいる中、各工程で使用されている制作支援ソフトについて説明していきます。

アナログ作画で必要な道具

CGアニメーションの台頭やアニメ制作のデジタル化に伴い、作画工程のほとんどがデジタル作画に変わっているのかと考えられる方も多いでしょうが、実際には今でも作画工程の中心はアナログ作画です。そこで、実際にアニメーターたちがどのような道具を使って作業をしているのか見ていきましょう。

鉛筆・色鉛筆


鉛筆は消しやすさを重視してHB/Bを使われる傾向があり、色鉛筆は硬質のものと硬質でないものを分けて使用し、硬質は明るい部分を強調するために使用します。

作画用紙


「動画用」と「作画用」に分かれており、作画するための紙です。原画用紙の方が動画用紙より薄いことが特徴です。例えば、TVアニメ1話で、数千枚の作画を要します。

トレース台


作画時の複写に必要なツール。下から光を当て透かせることで、作画を補助します。

タップ


動画用紙を固定するために使います。人によって、厚いもの、薄いものを使い分けています。

鉛筆削り


鉛筆削りの機械です。一部の人はこだわって線を描くために、カッターで削るようです。

そのほかに定規、消しゴムなども必須品ですが、人によっては、手を汚さないための手袋や細かく指定した場所を消すために字消し板を使うなど作画に役立つ道具はたくさんあります。絵を日頃から描いていない人にとって、鉛筆や鉛筆削りは小学生の時に使用したなつかしいものですが、アナログ作画においてこれらは必需品なのです。

デジタル作画で必要な道具

ここまで説明した通り、アナログ作画では多くの道具を使用しますが、対して、デジタル作画においては、使用する道具は基本的にペンタブレット(以下、ペンタブ)のみです。

ワコムさんのWacom Cintiq 16 FHD ブラック

ペンタブには、液晶タブレット(以下、液タブ)と板タブレット(以下、板タブ)の2つがあり、それぞれ下のような特徴があります。

液タブ

  • 綺麗な線を描くことに優れている
  • 慣れやすい(紙に描いている間隔に近いので)
  • 価格が高め

板タブ

  • 視界を広く保ちやすい
  • (長年アナログを描いてきた人は)作業感があり、慣れにくい
  • 価格は安め

それぞれの特徴を踏まえると、線を多く描くアニメーターは液タブが適しています。実際、デジタル作画に関わる多くのアニメーターの方は液タブを使用しています。

アニメ制作時に使用するソフト


各工程で使用する主要なソフトウェアの組み合わせ(筆者作成)

次に、デジタル作画で必要になるソフトについて説明していきます。アニメ制作会社は、ソフトの適性、導入コスト、ツールとしての使いやすさなどを踏まえて、様々な組み合わせで作画ソフトを利用しています。上の表は、実際に制作会社で原画、動画、仕上げ工程で使われるソフトの組み合わせとして特に有名なものになります。
これより下で、特に有名なソフトについて簡単に説明していきます。

ClipStudioPaint


マンガやイラストなどの絵描きの方に有名なセルシス社の製品になります。後ほど説明するStylosの後継モデルで、パース機能等の充実が果たされた原画を中心とした作画用のソフトです。

Harmony


東映アニメーションやシンエイ動画など日本のトップスタジオが採用していると同時に、ディズニーを含む世界的に著名なアニメーションスタジオはこちらのソフトを利用しています。海外製で業界外の方には見慣れない仕様ですが、直感性に優れた非常に有能なソフトです。また、同じくToonBoom社から絵コンテ用にStoryboard Proというソフトも販売されており、プリプロダクションにおいて使用が増えています。

TVpaint

フランスに拠点を置くTVpaintDevelopment社の開発した絵コンテから撮影までトータルに機能を提供するソフト。しかし、実務としての使用は作画工程に限定されている場合が多く、PaintManとの併用が多く見られます。

Stylos&PaintMan

Retas studioシリーズ。Stylosは原画、動画、一部仕上げまでどの工程も対応でき、PaintManは仕上げに特化したソフトです。過去に多くのデジタル作画を強みとした会社で使用されていましたが、原画部分は徐々に後継のクリスタに置き換えられているのが現状です。

他にも、ジブリ版をベースにしたOpenToozや、個人が開発したAniLaPaintなどいろいろなソフトがあります。OpenToozは、ドワンゴが提供している無料ソフトで、初期にイタリアのDigitalVideo社が開発したものを、スタジオジブリが使用しフィードバックしたカスタマイズ版が基になっています。

このように多様なラインナップがあるがゆえ、制作スタジオがソフトを導入する際、会社の強みを活かすためにどのくらいのコストの、どのような機能を有した(例えば海外製は、タイムラインを念頭に置かれた設計のため日本のアニメーション制作の伝統であるタイムシートに基づいた制作に十分に対応していないなど。)ソフトにするかなど多角的な検討が必要なのです。

今回は、アニメーション制作で使用するツール・ソフトについて説明してきましたが、いかがでしたか。次回は、アニメ制作のツール・テクノロジーに関して最先端の技術をお伝えします!では、次回をお楽しみに。

<ライター:浅井恵斗、 編集:数土直志>