”夏”を詰め込んだ傑作「ペンギン・ハイウェイ」 from アニメライター講座

ライター:松岡美佐紀

あの夏、ぼくは小学4年生だった。素敵で、すこしふしぎなあの夏のことを、ぼくは絶対に忘れない― 映画『ペンギン・ハイウェイ』より

もうすぐ夏がやって来る

夏といえば、何を想像するだろうか。アニメに馴染みがある人にとっては、アニメ映画公開の季節だと言えるだろう。壮大なストーリーから得られるワクワク感、どこか懐かしさを感じるノスタルジックな雰囲気、夏を舞台にしたアニメは夏に観るとより面白く感じられる。

名作揃いの夏公開アニメの中でも今回は、2018年公開「ペンギン・ハイウェイ」を紹介する。

原作は、数々の受賞経歴を持ち「夜は短し歩けよ乙女」や「四畳半神話体系」が代表作として知られる作家・森見登美彦の同名小説。2010年には第31回SF大賞を受賞している。

「気になったことは全てノートにまとめる」という習慣を持つ真面目な小学生・アオヤマくんは、海のない街に突然現れたペンギンの謎と出会うことになる。

どこかミステリアスな雰囲気を纏った”お姉さん”と不思議な関係を築きながら”果てしない世界の謎”と”冒険”を通じて、ひと夏の時間を過ごしていく。

映画のキービジュアルを一目見るだけでもわかるように、本作の水彩画を彷彿とさせる、清涼飲料水のような爽やかな「色彩」は、本作の夏らしさを象徴している大きな魅力だ。

ストーリーに関しては、単純なペンギンかわいさだけを求めている観客は、鑑賞後「サッパリしない」という感想に行き着くだろう。夢多き少年が持つ冒険欲求・年上の女性への憧れ・叙情・知識欲を繊細に描写し、初めて作品に触れたはずなのにどこか懐かしさを感じられる、そんな感性がこの映画を楽しむポイントだと言える。そして本作の謎めいた世界観を「わからない」と受け取るか、「考察・解釈の余地があり、面白い」と受け取るかで大きく評価が変わってくる作品だ。

目に映るもの全てに純真であったあの頃を思い出したい、そんな想いを抱く人々の心を一端でも掬い上げる体験を、夏の香りと共に、この「ペンギン・ハイウェイ」は届けてくれる。

<編集協力:浅井恵斗>