「さらい屋五葉」における”間”の魅力〜江戸の町には小粋な大人が生きている〜 from アニメライター講座

ワクワーク

ライター:吉井 志保

『さらい屋五葉』は、江戸を舞台とした時代劇です。

時代劇と言っても、切った張ったの大立ち回りを演じることはほとんどありません。

物語は誘拐組織「五葉」の面々を中心とした人情噺を交えながら、12話をかけてじっくりと核心へ迫っていきます。

『ACCA』や『リストランテ・パラディーゾ』などで有名な原作者、オノ・ナツメのタッチを忠実に再現したハイセンスな絵柄とポップな音楽の、ある種異質とも言える組み合わせが独特の心地よい空間を作り出していて、吸い寄せられるように最後までたどり着いてしまいました。

つらつらと語ってしまいましたがこのアニメ、なんといっても「間」が素晴らしいのです。

日ごろ人間は会話の途中で咳払いをしたり、ものを食べたりなどちょっとした動作を行なうことが多いですが、アニメーションではこの「間」は省略されがちです。無理もありません。多くの場合、視聴者はスピーディーな展開を求めているのですから。

しかし『さらい屋五葉』では、この「間」がとても丁寧に表現されています。

座敷での一幕、主人公政之助の「松吉殿は帰ってしまったでござる」という言葉に対し、弥一はすぐには返答しません。

急須からゆっくりと茶を注ぎ、政之助に湯呑みを渡しながら目を見て「そういう奴だ」と一言。

この一連の流れを丁寧に描くことで、登場人物を「生きている」と感じさせてくれるのです。

おそらく、現代に生きる私たちと江戸の彼らとでは、時間の流れも異なるのでしょう。

弥一を筆頭に「五葉」の面々は、それぞれ過去に「痛み」を抱えながらも自らの信条を守らんとする小粋な大人ばかり。そんな彼らと主人公政之助の出会いが、物語の鍵となります。

また、食事シーンもこのアニメの見どころの一つです。白米に味噌汁、それに漬物。たったこれだけの食事がこれほど美味しそうに見える作品には、そうそう巡り会えないでしょう。

アニメは全12話で、原作とは一味違ったオリジナルの結末を迎えています。

是非一度、江戸の空気を感じてみてください。

いつもよりも一回り小さな茶碗に山盛りの白米、それに味噌汁と漬物をじっくり味わいたくなること、請け合いです。

<編集協力:浅井恵斗>